新北斎展でわかった北斎の新たな魅力


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北斎展。

永田生慈氏のコレクションを中心に展開し、

北斎の人生を6期に分けて、

展示していました。

 

一人の人の一生を追っていく展示は、

作風の推移だけでなく人となりや人間関係、

人生をとりまく様々な出来事まで

垣間見ることができ、以後その画家に対する

親しみが強まったりするので好きです。

今回は以前の北斎展とは異なる新たな魅力に

出会えました。

 

北斎の色といえば

これまでの北斎は、色でいうと

富嶽三十六景の「青」の印象が強かった

のですが、宗理期(36〜46歳)の頃の

作品群では「紅」がとても鮮やかで美しい。

今、北斎といえば?と聞かれたら

あの紅と答えたいと思います。

それから水墨画のような微妙な

グラデーションの「緑」も印象的でした。

訪れると、私のように自分にとっての

北斎のイメージカラーが変わるかもしれません。

 

比べるからこそわかる、晩年の迫力

北斎の描きぶりも時期に応じて変化していきます。

他の画家で感じたことがないのですが、

晩年が一番力強い。

画技をひたすら高めていくことに人生を

賭したからこそかもしれません。

 

特に弘法大師修法図 (1844-47)の緊迫感。

いまにも目の前で動き出しそうな鬼と

弘法大師は圧巻でした。

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そのほか、おもしろかったこと、もの

その他、いろいろな新たな北斎の魅力に

出会えました。

○諸国名橋奇譚

いろいろな地方の様々な橋が楽しかった

です。橋マニア必見。

富嶽三十六景 神奈川沖浪裏 (天保1830-34頃)

どのように版が刷られていくかわかる

版画の刷り上がりまでの展示。

プリンターに慣れてしまっていると、

版画もむしろ描くよりも容易だったの

かなと思ったりもしたのですが、実際は

事前にどんな色味の構成にするか決め、

色ごとに版を細かに分け、刷り重ねて

色をつけ、グラデーションも作っていく。

この過程を見たら、作品を観る目が大きく

変わり、版画の美しさにより敏感になりました。

 

○梅樹図 (寛政9年,1797年頃)

円山応挙の雪松図屏風のように、描かずに

描く技法。

応挙以外にもこんな印象深く描く画家がいるのか

と嬉しくなりました。それと同時にこの描き方が

自分は大好きなことを再認識。


○しん板くミあけとうろふやゆしんミセのづ (1807-12頃) 

組み立てるとお風呂やさんになる平面図のセット。

この頃からこんなものが出ていたのかと親近感が

わきました。当時の遊び心がわかって楽しいです。

 

北斎漫画や下絵など

職人さんや画家たちの教本的なさまざまなひと、

動物、ものなどの動きのスケッチ。

これがあることでどれだけのひとが腕を上げられ、

重宝したんだろうか。そしてかわいいものも多く、

手元に置きたくなるものもありました。

 

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いろいろな魅力に出会える新北斎展。

途中何度か展示替えがあるようです。

止むを得ない事情なら仕方がないなと

思うのですが、なんども足を運ばせる

ためだったら残念です。

 

確かな意図を持ってしっかり展示

しきられていてこそ、

観る側の立場に立った素晴らしい展示

のできる美術館かと思います。