ルーベンスの意外な素顔がわかる「ルーベンス展」
ルーベンスは取り立てて好きというわけでもないのですが、
この美術館ならば何か面白い切り口があると期待しての
訪問です。
この企画展を通じて作風が好みに
なったということは
取り立ててなかったのですが、
キリスト哀悼(1612頃)の女性の涙が3Dのようにリアルに
頰の上で玉になって輝いて今にも落ちそうだったこと
法悦のマグダラのマリア(1625−28年)のやつれ果てた表情の
リアルさには目を奪われました。
そして、こんな発見があったことが収穫でした。
- 古代のようなたくましく美しい肉体が当時はすでに見られなくなったことから、ルーベンスは古代彫刻の人物像からその筋骨の描き方を学んでいたこと。
- その際には石の彫刻と絵との違いを意識してリアリティを生み出そうとしていたこと。
- ルーベンス工房として1枚の絵を分業で描き、最後に自分が顔だけを描く。工房として苦手な部分を他の画家に描いてもらう。最高の質を備えた版画を作り量産を目指すなど、アーティストでありながら事業家としての感覚を強く持っていたこと。(一般的に美術展で事業家的才にもフォーカスを当てることがなかなかないからかもしれませんが、こんな特性を持っている過去の有名画家はほとんどいなかったのではないかと思います)
こうした点を知ることができたことが今回の私の1番の収穫です。
グッズコーナーはコンセプトが一貫せず、ルーベンスにしっかりと
フォーカスが当たっているとはなかなか言いづらいような
ラインナップだったのが残念です。
でも、以前買った北斎もそうでしたが、今回もカタログは
充実しているようでした。
そして秋の庭園も合わせて楽しみながらトーハクにも
足を運ぼうと考えています。